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<薬膳コラム>
2026年10月1日(木)
【薬膳コラム】クズ 葛根
国際中医師、国際中医薬膳師、薬剤師、
紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師 伊東千鶴子です。
秋の野に 咲きたる花を 指折りかき数ふれば 七種の花
萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花
姫部志(をみなへし) また藤袴 朝貌の花(万葉集より)
山上憶良が詠んだ秋の七草のひとつである葛(クズ)は、
古来より茎は天然繊維の原料に、
葉は家畜の飼料に利用されてきました。
また、根は薬用に、根から得られる澱粉は葛粉として
葛餅や葛切りなど、お菓子や料理に
広く用いられてきました。
私自身、嫁いだばかりの頃、
高齢の義祖母に葛湯を作っていた経験があります。
小さな行平鍋に葛粉を入れ、
水でよく溶かしてから弱火にかけ、
透明になるまでゆっくりと練ります。
蜂蜜を加えてマグカップに移し、
温かいうちに部屋まで届けるのが日課でした。
使用していた葛粉は奈良県吉野地方産で、
『大和本草』を編纂した貝原益軒翁に
「葛粉は吉野から出るものが最もよい」
と言わしめるほどの品質の高さで知られています。
『本草綱目』には、葛粉について
「渇きを止め、大小便を利し、酒を解し、
煩熱を去り、丹石を圧する」と記されています。
京都祇園で供される黒蜜を添えた冷たい葛切りは、
もともと花街で働く人々の二日酔いや
肩こりの緩和に役立っていたと伝え聞いています。
さらに、葛の花を使った酒毒を解く
「葛花解醒湯」という方剤もあります。
マメ科クズの周皮を除いた根を乾燥させた
生薬は葛根(カッコン)です。
葛根には軽度の発汗作用があり、
発疹が十分に出ない場合には発疹を促し、
下痢を止め、煩熱や口渇を改善する作用が
あるとされています。
漢方薬の葛根湯は、感冒の初期で汗がまだ出ていない
(手のひらが乾いているのを指標とする)段階の頭痛、
発熱、悪寒、鼻づまり、咳に用いられます。
また、結膜炎、中耳炎、扁桃炎、乳腺炎などの炎症性疾患、
肩こりや上半身の神経痛、比較的体力のある人の
蕁麻疹にも適応される処方です。
葛は、古くから衣・食・薬の場面で活用され、
現代においても幅広く利用されている植物といえます。
今度は自分自身のために、葛湯を作って、
透明になったところで、
蜂蜜をたらしてシナモンをふりかけていただきましょうか。
令和8年10月1日
薬剤師、国際中医師、国際中医薬膳師、
紡ぐしあわせ薬膳協会認定講師 伊東千鶴子





















